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カストラップ空港
日本では耐久性を考え、公共施設の床に木材を使う例は非常に少ないのですが、北欧圏では当たり前のようにフローリングが使われています。モノの耐久性よりも空間の優しさを優先したデザインです。
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ホテルDGI-Byen
このホテルはブラックダイアモンドと呼ばれるデンマーク王立図書館を設計したハンマー&ラーセンによるものです。日本のホテルの床は傷や汚れが目立たない絨毯が主流ですが北欧圏のホテルではフローリングが多く使われています。
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コペンハーゲン中央駅
最初に建設されたのは1864年。現在の形になったのが1911年。建物は市庁舎と対のデザインが用いられています。屋根の構造材は積層のアーチ梁で竣工当時のまま、百数十年を経ても現役です。バイキング船の構造をほうふつとさせます。
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SASホテルのAJライト
1959年このホテルにために設計されたスポットライトです。一階にあるカフェの柱周りに多用されています。上層階にある「レストランK」はヤコブセンインテリアの高級レストランですが、一階のカフェは気軽に入れるのでお奨めです。
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カフェ・ステリング
Cafe Stelling
ヤコブセン設計の「セブンチェア」が置かれたカフェ。1934年に完成した建物の設計もヤコブセンです。ヤコブセン好きのオーナーは照明器具から小物に至るまでヤコブセンデザインでそろえています。オープンラックには200冊の雑誌があり、自由に閲覧できます。ヤコブセンデザインの灰皿とランプ Gammeltorv 6
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SASロイヤルホテル外観
コペンハーゲン初の高層ビル(20階)で建築は1959年です。ヤコブセンは設計の全てを行い、建築・インテリア・設備・家具調度に至るまで全てにデザインを試みています。606号室は当時のままに保存されており宿泊も可能です。
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工芸博物館ヤコブセン展示室
常設展では20世紀初頭から今日までのデンマークデザインが展示されています。時代を経ても古びないデンマークデザインの秘密に触れることができます。ヤコブセン展示室には作品ごとに特徴的なインテリアアイテムが展示されています。デザイナー必見の博物館です。Bredgade68
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ガソリンスタンド
最近ヤコブセン設計のオリジナルに戻されたガソリンスタンド。コペンハーゲンから保養地のベルビュー海岸へ行く途中にあります。なんと言ってもユニークな形の庇が目を引きます。庇の薄いイメージとガラスブロックとタイルで造られた事務所の重量感のバランスが秀逸です。Kystvejen24,Skovshoved.Gentofte
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ヴィトレースク
ヘルシンキ西郊にあるサーリネンのアトリエです。サーリネンは友人達とここに大規模なアトリエを構えました。フィンランドの民家のような外観ですが内部はナショナルロマンティック様式があふれています。家具などもオリジナル品が展示されています。Hvittraskintie 166
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ヘルシンキ中央駅
1914年サーリネン設計。ナショナルロマンティック様式の代表的な建築です。外壁は赤っぽい御影石で重量感があります。アキ・カウリスマキ監督の映画「過去のない男」の冒頭シーンにこの駅が登場しています。
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ドラウアーの街並み
ニシン漁で栄えた古い漁師町。かつての漁港は現在ヨットハーバーになっていますが、300メートル四方の中に古い村がそのままの形で保存されています。可愛らしい街並みはゆっくり散歩するのに適しています。住人はコペンハーゲンに住む若い富裕層がセカンドハウスとして持つケースが増えているとか。ヨットハーバーに面したストランドホテルのオープンサンドも美味です。
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ZAZA
流行のタオルやアロマオイル、生活小物や家具を多く置いた人気店がZAZAです。地下は椅子やソファを集めたショールームになっています。Annankatu 23
北欧の家具や小物はナチュラルでクリーンなイメージがあり人気の高いインテリアアイテムです。このようなモダンデザインの源流はどこにあるのでしょう。この紀行は、その源流を探る旅です

1900年代初頭、北欧諸国では巨匠と呼ばれる建築家を多く輩出しました。デンマークのヤコブセン、スエーデンのアスプルンド、フィンランドのアールトやサーリネン父子などです。
時代的には古典的で装飾過多なクラシックからモダンへの橋渡しとなる時期です。当時のヨーロッパは産業革命が終わり飛躍的に工業製品の生産力が高まっていた時代です。しかし、デザインという面から見ると古典的でクラシックなデザインを単に工業製品にしているだけで、デザインという意識はありませんでした。巷には粗悪なデザインの工業製品であふれていたのです。
そのような時代に手仕事の味を見直し、誠実で実直なデザインを求める工芸運動が同時多発的にヨーロッパ各国で起きるのです。ドイツではユーゲントシュティール、英国ではアーツ&クラフツ、オーストリアではセセッシオン、イタリアではスティル・リベルテ、フランスではアール・ヌーヴォーと呼ばれたものです。
これらの運動は第一次世界大戦が始まった1914年に終焉し、ドイツのバウハウスを中心に、国民性や地域特性を持たないインターナショナルスタイルへと転化していきます。今日私たちがモダンスタイルと感じるものはこのインターナショナルスタイルの軸上にあるのです。北欧の巨匠たちは工芸運動が終焉を迎え、インターナショナルスタイルが拡大する時代に活躍し、ノルディックスタイルという世界的なデザインのトレンドをつくり出しました。これをデザインによる第二のバイキング時代と呼ぶ人もいます。

■ヤコブセン
アルネ・ヤコブセンはデンマークを代表する建築家でありインテリアデザイナーであり、プロダクトデザイナーです。広い範囲でデザイン活動を行っています。同時代のデザイナーにはハンス・ウェグナーも有名ですが、ウェグナーはあくまでもハンデュクラフトに徹した家具職人であるのに対し、ヤコブセンは総合的なデザインを行った点が異なっています。ヤコブセンは1902年コペンハーゲンに生まれました。先にも述べましたが、当時の一般家庭には量産化が著しい工業製品としての家具やドア、鋳物類が大量に入っていました。それらのデザインは一時代前の古典的なスタイルを単に工業化しただけというものが殆どでした。与えられた環境に反発するのは若者の常ですが、早熟なヤコブセンは、自室のインテリアを全て白いペンキで塗りつぶしたそうです。自室における物の形と空間の関係に不条理性を感じたのかも知れません。こうした考え方は終生ヤコブセンのデザインする態度として貫かれ、建築設計にあってもドアノブ一つに至るまで、自分でデザインしたことに現れています。当初は画家を目指しましたが、建築の総合芸術としての面白さに目覚め、22歳でデンマーク王立アカデミー建築科に進みます。時代はセセッションなどの運動が終焉を迎え、バウハウスを中心としたインターナショナルスタイルへの移行時期で、ワルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエなどが活躍を始め「産業デザイン」という言葉が生まれた時期です。一時代前の手工芸運動は工業と対立する考え方でしたがバウハウスのデザインは工業力を活かしながら、シンプルでモダンなデザインとしているのが特徴です。若いヤコブセンは自らの感性とも合致するバウハウスの影響を大きく受け、伝統的なハンディクラフトと産業デザインの融合を考えます。その代表的な家具に一つがアントチェアです。工業製品は直線的なデザインが得意です。片や手仕事の味は曲線的なデザインで発揮されます。薄い板は簡単に曲げることができます。曲げた板同志を何枚も接着していけば曲がった厚い板を造ることができます。これは積層合板という手法ですが、この曲がった板を切り抜けば、曲面を持った椅子の座を工業的に造ることができたのです。当初は曲面が完全には造れないため、補修部分を隠すために黒く塗装されていたのでアント(蟻)チェアと呼ばれたそうです。ヤコブセンの造形には常に手仕事を感じさせる曲線が用いられ、それが魅力にもなっていますが、その曲線は決して恣意的な曲線ではなく、型抜きや切削など常に工業的な手法を念頭に置いた物だったのです。ヤコブセンはデンマークのデザインが手工芸的な生産から工業的な生産に移行する時期に大きな影響を与え、今日でもその造形の魅力は衰えることがありません。

■サーリネン
1900年代初頭、北欧諸国では巨匠と呼ばれる建築家を多く輩出しましが、中でも異彩を放っているのがサーリネン父子ではないでしょうか。父親はエリエル・サーリネン(1873-1950)、息子がエーロ・サーリネン(1910-1961)です。父親はヘルシンキ中央駅の設計で、息子は米国ケネディ空港TWAターミナルやGM技術センターの設計で、それぞれ名を馳せました。1800年代が終わろうとする頃、ロシア帝国支配下のフィンランドで抵抗運動の一つとして民族主義運動が起こります。その引き金となったのが民謡を編纂した叙事詩「カレワラ」です。画家カレッラは「カレワラ」に基づく民族の自覚を絵画で訴え、この運動はナショナル・ロマンティズム運動と呼ばれました。ヘルシンキ工科大学を卒業したばかりのエリエルはカレッラの影響を強く受け、これを建築の設計に反映したナショナル・ロマンティシズム様式を確立させます。しかし、その様式は当時ヨーロッパで同時多発的に起きていた工芸運動であるアーツ&クラフツやセセッシオンの影響を強く受けたものでした。その集大成とも言える作品がヘルシンキ中央駅なのです。

■アールト
ドイツやフランスで起きたモダニズムの波はフィンランドにも押し寄せます。サーリネンのナショナル・ロマンティシズムに立脚したデザインはモダン派建築家フロステルス等から強い批判を浴びるようになりますが、1919年ロシアから独立して共和国となったフィンランドは古典主義的なデザインに回帰してしまい、モダニズムの芽はいったん成長が止まります。1898年クオルタネ(フィンランド中西部)で生まれたアルヴァ・アールトはモダン派建築家フロステルスに学びます。1925年にはバウハウスが設立され、更に大きなモダニズムの波が伝わります。そのような時代に事務所を開いたアールトはパイミオのサナチリウムやマレイヤ邸などの設計を通じ、成長が止まっていたモダニズムの芽を育て、開花させていきます。
アールトもヤコブセンと同じく、建築本体を設計するだけでなく、家具、照明器具、ドアノブに至るまで細かくデザインを行います。そのデザインテイストはヤコブセンのデザインが工業化を前提としたのに対し、アールトは工業を使いながらもあくまでも手工業産的です。例えば最後の作品となったフィンランディアホールの外壁です。真っ白い大理石のパネルが一面に張り巡らされていますが、よく見ると一枚のパネル(幅90センチ・高さ45センチ程度)は微妙に湾曲し、中央部で5ミリ程度ふくらんでいます。この微妙なふくらみの効果は絶大です。ボリューム感だけを強調するのではなく、ふくらみによって生まれる陰影はヒューマンスケールに呼応し、暖かみを感じさせます。アールトのデザインは、いったん機能的に突き詰めた後に、そのデザインを再構成しながら人間味、暖かさ、優しさを加えていったデザインのように思われます。

■人々の生活
北欧のデザインを見て思うことは「木」という素材へのコダワリです。家具小物から建築に至るまで、木という素材を常に意識したものが目に付きます。インテリアにあっても、床材はフローリングが当たり前ですし、壁面や天井にも木を効果的にあしらっています。日本も「木の国」でしたが、現在はどうでしょう。木造住宅と言っても安価に上げるために構造材に木材を使っているだけで、外壁も内壁も木材を包んで隠蔽してしまい、木造なのかコンクリート造なのか、鉄骨造なのか全く判りません。いっぽう、和風住宅は必要以上に木を強調し、一つのテイストしか許容しないような偏狭さがあります。日本の木造住宅も、そろそろフローリングだけではなく新しい木との交流を再発見しても良い時期に来ているのでは無いでしょうか。そして、その答えは北欧圏にあるのかも知れません。
北欧デザインのもう一つの特徴は光の扱い方です。冬季の光に乏しい北欧圏では、太陽に恵まれた我々と異なり、光がとても大切なのです。コペンハーゲン・カストラップ空港の南にドラヨーという小さな村があります。歴史保存地区に指定されリフォームや新築の場合、外壁材や屋根材・窓などはそれまでと同じものを使うよう義務づけられています。この村を歩いてみると家々の窓辺には必ずガラス製品が置いてあります。少しの光でも輝くガラス製品が窓辺にあるのは、光を大切に思う心のあらわれです。北欧に優れたガラス製品のデザインが多いのもこうした光への希求が背景にあるのだと思います。同時に照明器具についても光のことを良く知っている民族ならではの、繊細で優しいデザインが施され、モダンデザインの黎明期から今日に至るまで数多くの傑作が造られています。
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フィンランディアホール
トローン湾に面して建てられた白亜のフィンランディアホールはアールト最後の作品(1971年)です。内部はコンサートホール、コンベンションホールの二つの機能を持っています。通常のホワイエに当たるスペースでは大人数の食事ができるようになっています。コンサートホールは白を基調にした壁面と天井、黒い客席椅子の仕上げと同じく黒い木製音響反射板が心地よいコントラストを生み出しています。
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アカデミア書店
ヘルシンキ随一の繁華街にあるフィンランド最大の書店です。内部は白い大理石を張った三層の吹き抜けを中心に、売り場が回廊のように構成されています。売り場から吹き抜けへの開口は大きくなくスリットのようなイメージです。中にはアールトの名を付けたカフェがあり、アールトがデザインした照明器具や椅子、真鍮の手摺などを見ることができます。
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レストランヤコブセン
ヤコブセンが1937年に設計した劇場に隣接しています。元はベルビュー・ビーチ・レストランと言いましたが、流行らないレストランで何回も潰れたようです。最近になってヤコブセンファンのオーナーに代わり、内装から家具、カトラリーに至るまでヤコブセンテイストで揃えたところ人気が沸騰し、予約無しでは入れないそうです。Strandvejen 451,Klampenborg,Gentofte
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アルテックショールーム
アールトと妻のアイノのデザインした家具や照明器具を売るために、1935年美術評論家と資産家、アールト夫妻が設立したショップです。アルテックとはアートとテクニックの融合を表す造語です。アールトの死後も高品質でデザインに優れたアールト作品を生産販売し続けています。ショールームは繁華街エスプラナーデ通りにあり、アールトの作品だけでなく現在のフィンランドデザインのレベルを示す作品を豊富に展示しています。
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